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佐瀬班

佐瀬班・論文発表

遺伝子の転写をヒストンの脱メチル化で記録する分子機構の解明

*Mori, S., Oya, S., Takahashi, M., Takashima, K., *Inagaki, S., and *Kakutani, T.

Cotranscriptional demethylation induces global loss of H3K4me2 from active genes in Arabidopsis.

EMBO J., e113798 (2023) Linkプレスリリース

変動する自然環境の中で植物が効率的に遺伝子発現を変動させて環境に適応するためには、過去の遺伝子発現状態の情報を活かし、次に来る同様の環境変動に迅速に応答する必要があると考えられます。しかし、遺伝子の転写活性をどのように記録するのか、その分子メカニズムは不明でした。本研究では一般的に転写活性型マークと考えられてきたヒストンH3の4番目のリジンのジメチル化(H3K4me2)は植物においては転写抑制的に働くこと、また、H3K4me2を除く脱メチル化酵素であるLDL3タンパク質が転写中のRNAポリメラーゼに結合して働き、転写が活発に起きている遺伝子領域からH3K4me2を除くことを明らかにしました。その結果出来上がる低H3K4me2レベル状態は遺伝子発現に促進的に働くと考えられます。LDL3タンパク質のRNAポリメラーゼとの結合能力は陸上植物の進化の過程で獲得されたと考えられることから、動けない植物が変動環境に迅速に対応する巧みな仕組みであると考えられます。


遺伝子と転移因子配列の融合mRNAのエピジェネティック制御と環境ストレス応答

*Berthelier, J., Furci, L., Asai, S., Sadykova, M., Shimazaki, T., Shirasu, K., and *Saze, H.

Long-read direct RNA sequencing reveals epigenetic regulation of chimeric gene-transposon transcripts in Arabidopsis thaliana.

Nature Commun., 14, 3248 (2023) Linkプレスリリース

ゲノム中には転移因子(トランスポゾン)と呼ばれるDNA配列が多数存在しています。トランスポゾンはゲノム中を移動して遺伝子を破壊したり、自身のコピーを増幅させる性質があるため、植物はトランスポゾンの活性を抑制するDNAメチル化やヒストン修飾などのエピジェネティックな機構を進化させてきました。トランスポゾンは遺伝子の近傍や内部にも存在していますが、どのように遺伝子の発現と機能に影響するかは多くが未解明のままです。本研究では、RNAダイレクトシークエンシングという直接RNA分子を検出する技術を用いてシロイヌナズナを解析し、通常の遺伝子とトランスポゾン配列が融合したmRNAを転写する数千の遺伝子座を新たに同定しました。また、DNAメチル化やヒストン修飾の変化、環境ストレスが遺伝子-トランスポゾン転写産物の制御に影響を与えることも明らかになりました。さらに、領域内の吉田班白須グループとの共同研究により遺伝子-トランスポゾン転写産物の発現パターンが変化した変異体では病原体感染に対してより抵抗性が上昇していることも見出しました。高温や病原菌などのに応じてトランスポゾンの発現量が変化していることが分かりました。今回の研究からトランスポゾン配列による遺伝子転写制御と環境適応のメカニズムの一端が明らかになりました。


Nozawa, K., Masuda, S., Saze, H., Ikeda, Y., Suzuki, T., Takagi, H., Tanaka, K., Ohama, N., Niu, X., Kato, A., and *Ito, H.

Epigenetic regulation of ecotype-specific expression of the heat- activated transposon ONSEN.

Front. Plant Sci., 13, 899105 (2022) Link


Furci, L., Berthelier, J., Juez, O., Miryeganeh, M., and *Saze, H.

Handbook of Epigenetics, 263-286 (2022)


Nozawa, K., Masuda, S., Saze, H., Ikeda, Y., Suzuki, T., Takagi, H., Tanaka, K., Ohama, N., Niu, X., Kato, A., and *Ito, H.

Epigenetic regulation of ecotype-specific expression of the heat- activated transposon ONSEN.

Front. Plant Sci., 13, 899105 (2022) Link


Asanuma, T., Inagaki, S., Kakutani, T., Aburatani, H., and *Murakami, Y.

Tandemly repeated genes promote RNAi-mediated heterochromatin formation via an antisilencing factor, Epe1, in fission yeast.

Genes Dev., 36, 1145 (2022) Linkプレスリリース


ヒストン修飾の分布を決める2つの機構を発見

*Oya, S., Takahashi, M., Takashima, K., *Kakutani, T., and *Inagaki, S.

Transcription-coupled and epigenome-encoded mechanisms direct H3K4 methylation.

Nature Commun., 13, 4521 (2022) Linkプレスリリース

ヒストン修飾の1つであるヒストンH3タンパク質の4番目のリジンのメチル化(H3K4メチル化)は、進化的保存性が高く、ゲノムの中でも特に発現レベルの高い遺伝子領域に分布してします。H3K4メチル化が遺伝子の発現を促進しているのか、あるいは遺伝子発現の結果導入されるものなのかといった点や、H3K4メチル化が特定のゲノム領域に導入される仕組みについては、いくつもの仮説が提案され、議論が続いていました。今回の研究では複数あるH3K4メチル化酵素それぞれのゲノム中の分布を実験的に決定し、局在パターンを機械学習によりモデル化する手法から、遺伝子の転写装置と共働するタイプのメチル化酵素と、特定のクロマチン修飾やDNA配列を標的にするタイプのメチル化酵素の2つが分業してH3K4メチル化を制御していることを見出しました。またこの2つの制御モードはシロイヌナズナとマウスという進化的に遠く離れた生物種間で保存されていることも見出しました。


*Miryeganeh, M., Marlétaz, F., Gavriouchkina., D, and *Saze, H.

De novo genome assembly and in natura epigenomics reveal salinity-induced DNA methylation in the mangrove tree Bruguiera gymnorhiza.

New Phytol., 233, 2094-2110 (2022) Link, プレスリリース


*Inagaki, S.

The complex world of genetic systems for elaborate gene regulation that enables flexible plant life.

Genes Genet. Syst., 96, 207 (2021) Link


*Inagaki, S.

Silencing and anti-silencing mechanisms that shape the epigenome in plants.

Genes Genet. Syst., 96, 217 (2021) Link


*Yamaguchi, N., Matsubara, S., Yoshimizu, K., Seki, M., Hamada, K., Kamitani, M., Kurita, Y., Nomura, Y., Nagashima, K., Inagaki, S., Suzuki, T., Gan, E.S., To, T., Kakutani, T., Nagano, A.J., Satake, A., and *Ito, T.

H3K27me3 demethylases alter HSP22 and HSP17.6C expression in response to recurring heat in Arabidopsis.

Nature Commun., 12, 3480 (2021) Link


Takahashi, N., Inagaki, S., Nishimura, K., Sakakibara, H., Antoniadi, I., Krady, M., Ljung, K., and *Umeda, M.

Alterations in hormonal signals spatially coordinate distinct responses to DNA double-strand breaks in Arabidopsis roots.

Sci. Adv., 7, eabg0993 (2021) Link


アンチセンス転写によって駆動されるエピゲノム制御機構の発見

*Inagaki, S., Takahashi, M., Takashima, K., Oya, S., and Kakutani, T.

Chromatin-based mechanisms to coordinate convergent overlapping transcription.

Nature Plants, 7, 295-302 (2021) Link, プレスリリース

生物のゲノム上ではタンパク質をコードする遺伝子のみならず、非コード転写も頻繁に起きており、ゲノム上では入り組んだ転写が起きていることが分かってきていますが、この入り組んだ転写を調節する仕組みはほとんど理解されていません。今回の研究では、ゲノムが小さく、遺伝子が密に並んでいるシロイヌナズナにおいて、数百もの遺伝子領域において逆向きにオーバーラップする転写(アンチセンス転写)が起きていること、またこのアンチセンス転写が起きている領域の転写を調節する新たなエピゲノム制御機構を見出しました。またこの制御は、植物が冬の低温を記憶し春に開花する仕組みに関与しています。これらの結果は、ゲノム上での近隣遺伝子との関係性がエピゲノムを介して遺伝子発現や環境への適応に果たす役割を示唆しています。


*#To, T.K., #Nishizawa, Y., #Inagaki, S., #Tarutani, Y., Tominaga, S., Toyoda, A., Fujiyama, A., Berger, F., and *Kakutani, T.

RNA interference-independent reprogramming of DNA methylation in Arabidopsis.

Nature Plants, 6, 1455–1467 (2020) Link, プレスリリース